
フラッグフットボールは、アメリカンフットボールの戦略的な面白さを残しつつ、タックルの代わりに腰のフラッグを奪うことでプレーを止める「接触禁止(ノンコンタクト)」のスポーツです。この安全性の高さから教育現場でも導入が進み、2028年ロサンゼルスオリンピックの追加種目として正式に選出されました。
5人制で行われるこの競技は、身体の大きさよりも、一瞬のスピードと、相手の裏をかく「緻密な作戦(プレイブック)」の理解が重要視されます。知力と体力を高いレベルで融合させる必要があるため、専門職や学生として高い志を持つアスリートたちが多く活躍しているのも特徴です。
日本女子代表の司令塔であるクォーターバック(QB)を務めるのが、近江佑璃夏(おうみ ゆりか)選手です。彼女は立命館大学卒業後、損害保険会社でのアスリート社員を経て、現在は日本初のプロフラッグフットボール選手として活動しています。
NHKのドキュメンタリー番組『スポーツ×ヒューマン』では、近江選手が仕事と競技を両立してきた日々や、プロとしての道を選択するまでの葛藤が詳細に描かれました。主将としてチームをまとめ、世界選手権で銅メダルを獲得したリーダーシップは、多くの視聴者に感銘を与えました。彼女の存在は、日本におけるフラッグフットボールのプロ化を牽引する象徴となっています。
一方、代表のワイドレシーバー(WR)として得点力の要となっているのが、中畑友里(なかはた ゆり)選手です。彼女は大阪医科薬科大学 医学部の現役学生であり、将来は医師を目指す立場にあります。
中畑選手は、2021年に医学部1年生で日本代表に初選出されて以来、多忙な学業と世界レベルの練習を並行してきました。現在は2028年のロサンゼルス五輪を大きな目標に掲げており、そのために休学という選択をしています。メディアのインタビュー等では、医学部での学びと競技における戦術理解の親和性についても語っており、将来の医療従事者としての素養をフィールドでも発揮しています。
近江選手や中畑選手が所属する女子日本代表は、現在世界ランクでも上位に位置する強豪です。彼女たちの強みは、海外勢の体格差を補って余りある「戦術の正確さ」にあります。
2024年に開催された世界選手権において、日本は歴史的な銅メダルを獲得しました。この結果により、2028年ロス五輪でのメダル獲得は現実的な目標となっています。プロとして環境を整えた近江選手、そして休学して全てを注ぐ中畑選手。それぞれの立場で挑戦を続ける二人の存在が、チームの推進力となっています。
フラッグフットボールという新種目を通じて、近江佑璃夏選手はプロとしてのキャリアを切り拓き、中畑友里選手は医学生としての道を一時休学して夢を追っています。それぞれの背景は異なりますが、2028年ロサンゼルス五輪での成功を目指す意志は共通しています。