
「人生会議」とは、将来の医療やケアについて、本人が元気なうちに家族や医療者と話し合い、意思を共有しておく取り組みです。これは、専門的にはACP(アドバンス・ケア・プランニング)と呼ばれ、厚生労働省が2018年から普及を進めています。
目的は、「もしものとき」に備えて、自分らしい生き方や医療の選択を事前に考え、周囲と共有しておくこと。意思表示ができなくなったときでも、本人の価値観に沿った医療が提供されるようにするための仕組みです。
「人生会議」という言葉は、厚生労働省が2018年に実施したACPの愛称公募で選ばれたものです。応募総数1,073件の中から選ばれたこの名称を提案したのは、静岡県浜松市・聖隷浜松病院の集中治療室で働く看護師・須藤麻友さん。
この事実は、聖隷浜松病院の公式ブログにて紹介されています。須藤さんは、重篤な患者さんと日々向き合う中で、「本人の意思がわからないまま医療を進めること」に葛藤を感じていたと語っています。
そこから、「元気なうちに、人生の大切な選択を"会議"のように話し合ってほしい」という願いを込めて、「人生会議」という言葉を提案したのです。
厚生労働省は、毎年11月30日を「人生会議の日」と定めています。これは「いい看取り・看取られ(11=いい、30=みと)」という語呂から来ており、命の終わりに向き合うことを前向きに考えるきっかけの日とされています。
香川県や大阪府など、自治体単位での普及啓発イベントも活発です。たとえば香川県では、落語家によるオリジナル落語や専門家の講演など、親しみやすい形で人生会議の大切さが伝えられています。
人生会議は、「死を語る場」ではなく、「生き方を共有する場」。名付け親が看護師だったという事実は、医療の現場から生まれた本当の願いを物語っています。
静かな夜に、「自分らしさ」について話してみる時間。それが、人生会議の第一歩かもしれません。