
2025年11月24日深夜、NHK BSで放送された「ザ・ベストテレビ2025 第1部」は、民放連賞・テレビ教養部門の受賞作の特集。今回のテーマは、BS12トゥエルビ制作のドキュメンタリー『つなぐひと〜わたし、義肢装具士になりました〜』です。原版の魅力を生かしつつ、NHK版では放送枠に合わせた再編集が施されています。
物語の舞台は、島根県大田市大森町にある義肢装具メーカー中村ブレイス。伝統的な町並みに溶け込む工房で、人の生活と技術をつなぐ現場が丁寧に描かれます。若手の義肢装具士が、患者や先輩技師、医療スタッフと関わりながら成長していく様子が主軸です。
番組の司会は元NHKアナウンサーの三宅民夫さん。ゲストには、ドキュメンタリー作家の森達也さん、ノンフィクション作家の河合香織さん、アメリカ公民権研究者のヴァージル・ホーキンスさんが登場し、作品の社会的意義を多角的に掘り下げます。
語りについては、BS12トゥエルビで放送された原版では佐藤寛太さん(劇団EXILE)が担当し、若手義肢装具士の視点に寄り添う柔らかな語り口が印象的でした。一方、NHK BSでの再編集版では、NHKアナウンサーの杉浦友紀さんが語りを務め、落ち着いたトーンで番組全体を包み込む構成となっています。
このように、語り手の違いが番組の印象に微妙な変化を与えており、原版と再編集版の両方を比較することで、演出意図や視点の違いを読み解く楽しみもあります。
義肢装具士は、医師の指示のもとで採型・設計・製作・適合・再調整を一貫して担う国家資格の専門職です。対象は切断、脳卒中、脊髄損傷、骨関節疾患、神経・筋疾患、小児整形、高齢者の転倒予防など多岐にわたり、多職種連携が不可欠です。
義肢(prosthesis)はギリシャ語の「前に置く」を語源とし、欠損部に機能を付加する概念です。装具(orthosis)は「正す・まっすぐに」が語源で、姿勢・動きの矯正を目的とします。関連用語として、ソケット、サスペンション(ピン・スリーブ・真空)、アライメント、フット/膝ユニット(エネルギーリターン・マイクロプロセッサ膝)、AFO・KAFO、スプリント、三次元採型、圧分布評価が頻出です。
採型から試適、アライメント調整、歩行訓練までの連続プロセスが、患者の生活目標に照らして描かれます。特に、皮膚状態や接触圧のモニタリング、装着感のフィードバックをもとにした微調整の反復が臨床的ハイライトです。
「また歩きたい」という願いに応えるための技術と、共感・説明・合意形成のバランスがテーマ。患者の語りと制作者インタビューが交差し、支援の倫理と現場の意思決定が具体的に示されます。
厚生労働省指定の養成校(専門学校・大学)で3年以上学修し、国家試験(筆記+実技)に合格します。学ぶ内容は解剖学・運動学・装具学・義肢学・歩行分析・CAD/CAMなど。
国内の義肢装具士有資格者はおおむね数千人規模(約5,500〜6,000人程度の推移目安)。地域医療・産業連携において、人材の希少性が課題であり、多職種連携のハブとしての期待が高まっています。
・ザ・ベストテレビ2025 番組情報(NHK BS/民放連賞・テレビ教養部門)
・BS12トゥエルビ『つなぐひと〜わたし、義肢装具士になりました〜』番組資料
・日本義肢装具学会テキスト(義肢装具学:基礎と臨床)
・リハビリテーション医学標準テキスト(歩行分析・装具)
・厚生労働省 義肢装具士国家試験ガイドライン
・国内有資格者数の統計的推移(関係団体・年報の集計)