
ADHD(注意欠如・多動症)は「困りごと」や「生きづらさ」として語られることが多いですが、同じ特性が創造性や集中力といった強みとして現れることもあります。今回は、ADHDの特性がどのように才能として発揮されるのか、その背景にある脳の働きとともに見ていきます。
ADHDの人は、興味のあることに対して極端に集中する「過集中」の傾向があります。これは、報酬系(側坐核)が強く反応し、時間感覚や疲労感を忘れて没頭する状態です。短時間で深い理解や創作が可能になる一方で、切り替えが難しく、生活リズムを崩すこともあります。
ADHDの人は、注意が分散しやすいという特性から、複数の視点や意外な組み合わせに気づきやすい傾向があります。これは、創造的思考や問題解決の場面で強みとなります。歴史上の人物の中にも、後世にADHD的な特性を持っていたとされる人がいますが、これはあくまで仮説であり、現代の私たちが自分の可能性を考えるヒントとして受け取るのがよいでしょう。
ADHDの特性は、環境との相互作用によって「困りごと」にも「才能」にもなります。たとえば、自由な発想が求められる場面では力を発揮しやすい一方で、ルールや手順が厳密な場面では苦手さが目立つこともあります。大切なのは、自分の特性を知り、活かせる環境を見つけることです。
過集中を活かすには、時間管理の工夫(ポモドーロ・タイマー、作業の区切り設定)や、環境の最適化(刺激の少ない空間、視覚的な整理)が有効です。また、興味のある分野を深める機会を意識的に作ることで、自己効力感や達成感が育ちます。
ADHDの特性は、努力の方向性と環境の理解によって、困りごとから可能性へと変わります。自分の特性を責めるのではなく、どう活かすかを考える視点が、人生の選択肢を広げてくれます。
ADHDの特性は、困難とともに創造性や集中力といった光も持っています。次回は、支援の実際──ペアレントトレーニングや環境調整、当事者研究の実践例を紹介し、日常で活かせる工夫を探っていきます。
岩波 明『発達障害』、高橋 長秀 医師の講演資料、ADHDと創造性に関する研究論文、当事者のエッセイ・講演記録