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2026年3月に開幕するミラノ・コルティナダンペッツォ冬季パラリンピック。世界最高峰の舞台を目指すアスリートの中に、医療の最前線で命を支える現役の登録看護師(RN)がいます。その名は、エリン・マーティン(Erin Martin)です。
エリン・マーティン選手はシアトル子供病院で働く看護師でありながら、アメリカ代表のパラノルディックスキー選手として、2022年北京大会に続き2大会連続の出場を目指しています。脊髄損傷という大きな困難を乗り越え、なぜエリン・マーティン選手は二つの過酷な道を歩み続けるのでしょうか?
エリン・マーティン選手は、パラノルディックスキー(クロスカントリー)の「座り(Sitting)」カテゴリーで活躍するトップアスリートです。2022年の北京パラリンピックでは、アメリカ代表として初出場を果たしました。
2026年ミラノ・コルティナ大会に向けても、エリン・マーティン選手はアメリカ代表のナショナルチーム(強化指定選手)に名を連ね、ワールドカップなどの国際大会で着実に実績を積み上げています。現役の看護師としてフルタイムに近い形で働きながら、世界のトップを争う姿は、現地メディアから「ナース・アスリート」として高い評価を受けています。
下肢に障害を持つ選手が、専用の「シットスキー」を操り、腕の力だけで雪上を滑走する持久系競技です。エリン・マーティン選手は、看護師の仕事で培った「自己管理能力」と「精神的タフネス」を武器に、過酷なコースに挑んでいます。
エリン・マーティン選手の人生を大きく変えたのは2013年に起きた事故でした。不慮の事故により脊髄損傷を負い、下半身の自由を失いました。しかし、エリン・マーティン選手はこの逆境を、医療従事者を志す大きな転機へと変えました。
過酷なリハビリを経験する中で、自分を支えてくれた看護師たちの姿に感銘を受け、自らもその道を志します。身体的なハンディキャップを抱えながら猛勉強の末、登録看護師(RN)の資格を取得しました。現在は、ワシントン州にあるシアトル子供病院(Seattle Children's Hospital)のスタッフとして、病気や障害と闘う子どもたちの支援にあたっています。
看護師としてキャリアを築く傍ら、2019年頃からパラノルディックスキーを開始しました。当初は健康維持が目的でしたが、看護師仲間の勧めもあり、競技の世界へ没頭。医療者としての専門知識を自身のトレーニング管理に活かし、急速に力をつけました。
エリン・マーティン選手の日常は、極めて多忙です。彼女はシアトル子供病院において、ケアマネージャーとしての役割も含む看護業務に従事しています。特に彼女自身が車いすを使用していることは、同じような境遇にある子どもたちやその家族にとって、言葉以上の励ましとなっています。
トレーニング時間の確保は容易ではありませんが、早朝の雪上練習や、勤務後のジムワークを欠かしません。病院側もエリン・マーティン選手のパラリンピックへの挑戦を全面的に支持しており、遠征の際の休暇調整など、組織的なバックアップ体制が整っています。
彼女はインタビューなどで、「病院で頑張る子どもたちの姿が、レースの苦しい局面で踏ん張る力になる」と語っています。看護現場での実体験が、アスリートとしてのエリン・マーティン選手の精神的な基盤を支えているのです。
2026年3月6日に開幕するミラノ・コルティナパラリンピックにおいて、エリン・マーティン選手はアメリカ代表チームの中核を担うことが期待されています。北京大会での「完走」という目標を越え、今大会では培ってきたスピードと戦略で上位入賞、そしてメダル獲得を視野に入れています。
競技はイタリア北部の厳しい山岳コースで行われます。看護師としての冷静な判断力が、雪質の変化や起伏の激しいコース攻略にどう活かされるかが最大の見どころです。また、エリン・マーティン選手の活躍は、世界中の医療従事者にとっても大きな希望となるでしょう。
エリン・マーティン選手は現在、アメリカ代表のナショナルチーム(強化指定選手)として活動しており、過去の実績や直近のワールドカップの成績から、代表入りが極めて有力視されています。最終的な代表名簿は、大会開幕前の公式発表をお待ちください。
2013年に起きた事故による脊髄損傷です。エリン・マーティン選手はこの経験をきっかけに、自身が受けてきたケアを次世代へ還元すべく看護師となりました。
エリン・マーティン選手は、「看護師」と「アスリート」という、どちらも献身と忍耐を必要とする二つの道を全力で駆け抜けています。彼女の挑戦は、私たちに「どんな状況からでも、新しい自分を築くことができる」という強いメッセージを届けてくれます。
2026年3月、イタリアの地で雪原を滑走する彼女の姿に、ぜひ注目してください。
【参考資料】
・Team USA (United States Olympic & Paralympic Committee) ナショナルチーム・プロファイル
・Seattle Children's Hospital 広報誌・公式サイト
・International Paralympic Committee (IPC) 競技データ