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冬になると「学級閉鎖」という言葉を耳にする機会が増えますね。これは、インフルエンザなどの感染症が広がるのを防ぐために、特定のクラスを一時的に休みにする措置のことです。日本では学校保健安全法[1]に基づいて行われていて、教育と公衆衛生が手を取り合って対応しています。
実はこのような対応は日本だけでなく、世界中でも行われています(school closure)。ただ、日本にはいくつか独自の特徴があります。たとえば、学校全体ではなく、クラス単位で閉鎖することが多いのもそのひとつです。
海外では学校全体を閉鎖するケースが多いのに対し、日本では学級(クラス)単位での閉鎖が基本です。これは、クラスが子どもたちの集団生活の最小単位として大切にされているからです。感染が広がる前に、早めに対応することが目的です。
たとえばインフルエンザや新型コロナなどの感染症で、クラスの20%前後が同じ感染症で欠席した場合、学校長が中心となって、保健所や教育委員会と相談しながら閉鎖を判断します[2][4]。たとえば、40人クラスなら8人程度が欠席すると検討対象になります。学級閉鎖の期間は、おおむね3〜5日間が一般的です。このように、数値に基づいた早めの対応が、日本の特徴といえるでしょう。
学級閉鎖中は、不要不急の外出を控えるように学校から指導があります。これは、感染を家庭内にとどめて、地域への広がりを防ぐためです。学校がこうした感染症予防の教育的な役割も担っているのが日本の制度の特徴です[3]。
「学級閉鎖になったら、出席日数はどうなるの?」と心配になる方もいるかもしれません。でもご安心を。学級閉鎖による欠席は「出席停止」扱いとなり、成績や内申書に不利にならないよう配慮されています[1]。
これは、子どもたちが安心して休めるようにするための制度的な支えがあります。学業と健康の両立を大切にする、日本らしい配慮です。
子どもが学級閉鎖で家にいると、保護者も仕事を休まなければならないことがありますよね。そんなときに活用できるのが、「子の看護休暇」(看護等休暇)です。
この制度では、小学校3年生修了前の子ども1人につき年5日(2人以上で10日)まで、保護者が看病のために休暇を取ることができます[3]。最近の制度改正で、対象年齢が拡大されたのもポイントです。
企業によっては、学級閉鎖や感染症流行時に特別休暇を設けているところもあります。家庭と社会の感染対策を支える制度として、知っておくと安心ですね。
COVID-19の流行時には、世界中でschool closure(学校閉鎖)が行われました。アメリカでは州ごとに対応が異なり、都市部では長期閉鎖が多く見られました[4]。ドイツでは全国的な閉鎖のあと、地域ごとに段階的な再開が進められました。
韓国では、感染状況に応じてオンラインと対面授業を組み合わせるハイブリッド型が導入され、教育の継続が重視されました[5]。
WHO(世界保健機関)は、学校閉鎖は最終手段とし、感染状況に応じた段階的な対応を推奨しています[6]。日本のように、クラス単位で柔軟に対応し、教育的な指導も行う仕組みは、国際的にも注目されています。
日本の学級閉鎖制度は、子どもたちの健康を守りながら、学びを止めないための工夫が詰まっています。集団生活を大切にしつつ、感染症対策と教育的配慮を両立させるこの仕組みは、医療や教育に関わる方にとっても、学ぶことの多い制度です。
世界の事例と比べてみることで、日本の制度の特徴や強みがよりはっきりと見えてきます。これからの季節、学級閉鎖が増える中で、制度の背景を知っておくことは、子どもたちを支える大人にとっても大切なことかもしれません。