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「1%の出産」とは──病院以外で生まれる命の選択肢
日本では約99%の出産が病院などの医療施設で行われています。これに対し、助産所・助産院や自宅での出産はわずか1%未満。つまり「1%の出産」とは、医療機関以外で行われる自然な出産のことを指します。
この数字は、医療の安全性や制度の整備が進む一方で、個別性や温もりを重視した出産の選択肢が限られている現状を映し出しています。そんな「1%の風景」を支える助産師の存在は、出産のあり方に新たな光を投げかけています。
助産師としての原点──母の背中と父への反発
神谷整子さんが助産師を志した背景には、助産師だった母の影響があります。夜中でもお産に向かい、朝には笑顔で「男の子が生まれたよ」と語る母の姿に、幼い頃から憧れと尊敬を抱いていたといいます。
また、父親の「女が教育を受けるとろくなことはない」という価値観に反発し、「女性も自立しなければならない」という強い思いを持つようになったことも、助産師という道を選ぶ原動力となりました。
みづき助産院での活動──「女性の一生の伴走者」として
神谷さんは長年にわたり「みづき助産院」の院長として、出産のサポートだけでなく、母乳育児相談や産後ケアにも力を注いできました。2021年に分娩の取り扱いは終了しましたが、現在も地域の妊産婦を支える活動を続けています。
現在の主な活動内容(2025年時点):
・母乳育児相談
・産後ケア入院
・産後デイケア
・妊娠・出産・育児に関する個別相談
「女性の一生の伴走者として共にありたい」という理念のもと、神谷さんは出産前後のケアに深く関わり続けています。
映画『1%の風景』に出演──温もりある出産の記録
神谷さんの活動は、吉田夕日監督によるドキュメンタリー映画『1%の風景』にも記録されています。この作品では、助産所や自宅で出産する女性と助産師の姿が描かれ、効率性が重視される現代医療の中で、温もりある出産の選択肢を提示しています。※この映画には、みづき助産院だけでなく、つむぎ助産所(助産所長 渡辺愛助産師)も出演されています。
映画の中で神谷さんは「出産する女性の隣に寝るのは当たり前」と語り、助産師としての深い共感と覚悟を見せています。
NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』出演──助産師としての哲学に迫る
神谷整子さんは、NHKの人気ドキュメンタリー番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』第60回(2007年8月28日放送)に出演し、助産師としての信念と日々の実践が全国に紹介されました。
番組では、妊婦の体調を「手で診る」検診の様子や、24時間体制で母親の悩みに寄り添う姿が描かれ、神谷さんの「伴走者としての助産師」という哲学が深く掘り下げられました。お産は百人百様であり、経験に頼りすぎず、常に「違和感」に敏感であることの大切さを語る姿が印象的です。
この放送回は、NHKオンデマンドやDVDシリーズでも視聴可能で、助産師という職業に興味がある方、自然な出産に関心を持つ方にとって、神谷さんの言葉と行動は大きな示唆を与えてくれるでしょう。
神谷整子さんが伝えるメッセージ──「出産は誇り」
「出産を成し遂げた女性には、理屈ではない自信と誇りがある」と語る神谷さん。助産師としてその瞬間に立ち会えることは、何よりの喜びであり、人間の自然な営みの美しさを感じる瞬間でもあります。
まとめ──「1%の風景」が照らす未来
神谷整子さんの活動は、医療の枠を超えた"人と人とのつながり"を感じさせてくれます。彼女のような助産師がいることで、出産という人生の大きな節目が、より豊かで安心できるものになるのです。
「みづき助産院」は、自然な出産を望む女性たちにとって、かけがえのない選択肢。神谷さんの想いと歩みは、これからの出産のあり方に新たな光を投げかけています。助産師ってすてきなお仕事ですね。