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神戸で親子ともに緩和ケア医として患者と向き合ってきた関本雅子さんと、息子の関本剛さん。2022年4月、剛さんは45歳の若さで肺がんによりこの世を去りました。
NHK『ハートネットTV』などのドキュメンタリー番組でも大きな反響を呼んだ関本雅子・剛母子。緩和ケアのプロが、いかにして「わが子の終末期」に向き合い、その最期を看取ったのか。死の瞬間まで精神的に成長し続けた一人の医師と、その母の歩みです。
神戸市で地域医療と緩和ケアに捧げてきた関本家。母の雅子さんは、日本における緩和ケアの草分け的な医師として知られています。息子の剛さんもまた、緩和ケア医師でした。
しかし、2019年10月、剛さんは「肺がん」と診断されます。脳への転移も見つかり、完治は難しい状態でした。40代という若さ、そして医師としてこれからという時期の告知でした。
診断からわずか1か月後の2019年11月、剛さんは「第5回ちゃやまちキャンサーフォーラム」に登壇しました。自らががん患者となった直後でありながら、緩和ケアの重要性を多くの人に知ってもらいたいとステージに立ち、「いざとなったら自宅で看取りまでできるか、かかりつけ医を確認するのがいい」と、患者の視点に立ったアドバイスを語りました。
雅子さんは緩和ケアの専門家であっても、わが子の死に直面する一人の母親としての悲しみはあまりに深いものでした。「剛のおかげで、がんの方の家族の気持ちが痛いほどわかる」と語り、医師としての立場を超えた家族としての苦悩を抱えながら、息子を支え続けました。
剛さんは亡くなる直前まで医師であり続けました。病状が悪化していく中でも、亡くなるわずか1か月前まで外来診療を継続しました。自らの命の期限を悟りながらも、目の前の患者に向き合い続けた姿は、多くの人々に感銘を与えました。
2022年4月、関本剛さんは家族に見守られながら自宅で息を引き取りました。お別れ会では、生前に収録された「参列者への感謝を伝えるビデオ」が流されました。自らの死を冷静に見つめ、周囲への感謝を遺した幕引きでした。
雅子さんは現在、講演活動を通じて、剛さんが指針とした言葉を伝えています。「人間は他の動物と違ってどんなに肉体が衰えても死ぬ瞬間まで精神的に成長し続けることができる」「良き死は逝くものからの最後の贈り物となる」。これらの言葉を胸に、雅子さんは医師として、また一人の遺族として活動を続けています。