

2025年11月2日(再放送:11月8日)にNHK Eテレで放送された「こころの時代〜宗教・人生〜」では、世田谷区の就労継続支援B型事業所「ハーモニー」の施設長・新澤克憲さんが登場しました。
番組タイトルは「いくつもの声の『ハーモニー』」。精神疾患を抱える人々の「聞こえにくい声」に耳を澄ませることの意味を、静かに、しかし力強く問いかける内容でした。
ハーモニーでは、当事者が自身の幻聴や妄想を表現する「幻聴妄想かるた」を制作しています。これは単なる創作活動ではなく、互いの世界に思いを馳せ、共感し合う場を生み出す試みです。
新澤さんは「かるた作りによって、施設に集う人たちが互いの世界に思いを馳せ、共感しあう場ができた」と語り、番組では「トゥルルルと幻聴で電話 ケンタッキーにいくとおさまります」という札も紹介されました。
新澤さんの活動の原点には、広島での家族の被爆体験があります。その記憶は、社会の中で見過ごされがちな「小さな声」に耳を傾ける姿勢へとつながっています。
番組では、ハーモニーの仲間たちとの日々や、表現活動を通じて生まれる「共感の場」が丁寧に描かれていました。
2024年に出版された新澤さんの著書『同じ月を見あげて ハーモニーで出会った人たち』(道和書院)では、ハーモニーの仲間たちとの出会いや、広島、長島愛生園などの記憶が綴られています。
道端に置かれた言葉を拾い上げるように、誰かの見過ごされた声に光を当てる──それが新澤さんのまなざしなのだと感じました。
この番組は、ただのドキュメンタリーではなく、「共感とは何か」「声にならない声をどう受け止めるか」を私たちに問いかける時間でした。