
時計の針が12時を回ったころ、僕の右手に異変が起きた。線が書けない。鉛筆を止めることができないのだ。突然にである。(略)「字が書けない!」
と言っても、その意味はすぐに伝わらなかった。その状況は僕にも、そこにいた両親にも理解できなかった。いや、僕には少なくとも自分がふざけてやっていたのではないことはわかった。
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(『たとえば、人は空を飛びたいと思う―難病ジストニア、奇跡の克服』難波教行 2007年4月20日第1刷/講談社)⠀
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【敏塾の100冊】体の異変は時に誰にも理解できないことがあります。本人が一番戸惑っているのに、そのことすら周囲に理解してもらえないことがあります。